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Memory of Night
第11章 罠
注ぎ込まれている場所からひんやりとした感触。すぐにその部分が焼けつくように熱くなった。
半透明の液体が、体内に注入される。
それを視認した途端、ほとんど条件反射に近い動作で足を振り上げていた。
「くっ……」
特に狙いを定めたわけでもない、悪あがきみたいな攻撃だったが、それなりに効果はあったらしい。
振り上げた足は金髪男の肩に当たり、針が折れた注射器が金髪の手から離れる。
「てめぇ……」
脇腹に衝撃。金髪の膝がめり込んでいた。
激しい痛みに息が詰まる。
呼吸を乱して何度も咳き込んでいると、ひどい吐き気に襲われた。
金髪男が顎をしゃくって合図する。両腕を掴んでいた男達の手が放れた。
体が、湿った地面に放り出される。
宵にはもう立っていられるだけの気力はなかく、両手をついてそこにうずくまる。
視界がぼやけて徐々に意識が薄れていく。
「おい、こいつをいつもの溜まり場に連れてけ。あっちのが見つかりにくい。そこでなら、好きにまわしていいからよ」
金髪男の声が、やけに遠くで聞こえた。
続いて訪れた浮遊間を最後に、宵の意識は完全に途絶えた――。