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Memory of Night
第11章 罠
「宵は好きなんですよ、あなたのこと。母親として大好きだから、あなたの負担になることを嫌っているだけです。自分がいたから、あなたが入院するはめになったんじゃないかって思い込んでるから……」
「ばかねぇ」
いつの間にか必死になって弁解していた晃の言葉は、志穂のつぶやきによって遮られた。
「そんなふうに自分を責める必要なんてないのに……。あたしだって幸せだった。宵との日々は、楽しかったわ」
過去を思い起こすように、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
それが口先だけのものでなく、本心なのだということは、志穂の表情からはたやすく読み取れた。
「あたしが倒れた日、宵に、母親面すんな、迷惑だって言われてしまったの」
「それは本心じゃないですよ」
「そう……思う?」
不安げに尋ねてくる志穂に、晃ははっきりと頷いてみせた。
志穂が微笑む。
それは、屈託のない笑みだった。その笑みに、晃は一つだけどうしても聞きたかったことを尋ねた。
「――宵のこと、好きですか?」
志穂の瞳が見開かれる。
だがすぐに、何を今さらと言わんばかりの顔でうなずいた。
「ええ、大好きよ……!」