この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
Memory of Night
第11章 罠
小さな背中を丸め、縮こまるようにして志穂は両腕を抱えた。
まるで幼い子供のように。
「どうしてあなたが……あなたまでそんなこと言うんですか?」
しばらくそんな志穂の様子を黙って見つめた後、晃はそうつぶやいた。
その声は、意識したわけでもないのに自然と険の混じったものになる。苛立ちと歯がゆさがないまぜになった感情のまま、晃は志穂に言葉をぶつけた。
晃の声色に、志穂がびくっと顔を上げる。
「あなたまで『母親』を否定しないでください。それじゃ、いつまでたっても宵は報われない……っ」
宵の名前を出すと、志穂の瞳が戸惑いに揺れる。
その言葉が私情を挟んだものだということは、晃も十分承知していた。
だけれど止められなかった。
晃の脳裏に、祭の時に腕を振りかざし、母親の存在を否定していた宵の姿が浮かぶ。
しょせん他人だから。
口ではそう言いながらも、志穂に必要以上に近づくことを拒みながらも、その瞳は母親を求めていた。
「……宵が感情的になるのは、いつだってあなたが絡む時だけでした」
「え?」