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Memory of Night
第11章 罠

 小さな背中を丸め、縮こまるようにして志穂は両腕を抱えた。
 まるで幼い子供のように。

「どうしてあなたが……あなたまでそんなこと言うんですか?」

 しばらくそんな志穂の様子を黙って見つめた後、晃はそうつぶやいた。
 その声は、意識したわけでもないのに自然と険の混じったものになる。苛立ちと歯がゆさがないまぜになった感情のまま、晃は志穂に言葉をぶつけた。
 晃の声色に、志穂がびくっと顔を上げる。

「あなたまで『母親』を否定しないでください。それじゃ、いつまでたっても宵は報われない……っ」

 宵の名前を出すと、志穂の瞳が戸惑いに揺れる。
 その言葉が私情を挟んだものだということは、晃も十分承知していた。
 だけれど止められなかった。
 晃の脳裏に、祭の時に腕を振りかざし、母親の存在を否定していた宵の姿が浮かぶ。
 しょせん他人だから。
 口ではそう言いながらも、志穂に必要以上に近づくことを拒みながらも、その瞳は母親を求めていた。

「……宵が感情的になるのは、いつだってあなたが絡む時だけでした」
「え?」
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