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Memory of Night
第12章 吐露
差し伸べられる手を掴むことが、怖くて仕方なかった。誰かの重荷になることが怖い。
今誰かの手を掴んだら、自分と一緒に闇に引きずり込んでしまいそうな気がした。
志穂のように。
七年前、身よりのない宵に無条件で手を差し伸べてくれたのは志穂だった。
でもその代償に、志穂がなくしたものはとてつもなく大きい。
志穂の二の舞はもう嫌だった。
晃の右胸を、弱々しく突っぱねる。
壁伝えにずるずると座り込み、左足は不自然に伸ばしたまま、宵は右足を抱えた。
手と膝の間に顔をうずめて、晃を拒絶する。放っておいてほしかった。
一人デイイ。独リダッテ大丈夫。
そう自分自身に言い聞かせる度に頭痛がした。ひどい耳鳴りがする。
晃はもう強引に宵を引っ張ったりはしなかった。
屈みこみ、そっと宵の名前を呼ぶ。
宵は首を振った。
「宵」
晃は宵の腕を掴んだ。痣やすり傷だらけの腕。
晃の瞳が、悲しげに歪む。
「一人じゃ、どうにもならないことだってあるんだ……っ」
喉の奥でつっかえてうわずった晃の声は、宵の鼓膜を震わせる。