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Memory of Night
第4章 過去
「放せよ! 死んだなんて嘘だ……!! こんなの、ニセモノだーッ!!」
泣き叫びながらそれでも死体を蹴りとばそうとする宵を、医師がなんとか押さえこむ。
その時だった。
病室のドアが開き、若い女性が息を切らしてとびこんできたのだ。
その女性は死体に駆け寄り、父の姿を一目見るなり、その場にくずおれ両手で顔を覆った。
そして、父の名前を呼んだ。何度も、声を震わせながら。
「大河さん……」
医師は女性を知っているらしく、驚いたような顔をしていた。
突然現れたその人物に、暴れることを忘れ呆然としていた宵を医師が床に下ろす。
宵はおそるおそる、その女性に声をかけた。
「……誰?」
その女性が、はっとしたように宵を見る。
「宵くん……? ……わたしは、大河志穂」
そう名乗った志穂の声は小さく、かすれていた。
薄い色の大きな瞳。小柄で、痩せすぎなんじゃないかと思えるくらいに細い体。幼げに見える顔は、涙でぐっしょり濡れていた。
それが、宵が志穂に会った初めてだった。