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Memory of Night
第4章 過去
「何度も言った。……だが大河さんはそれを拒否したんだ。宵くんが、せめて高校生になるくらいまでは自分で面倒みたいと。大河さんの意見を尊重し、今までは薬で抑えていた……」
弘行は、苦汁を噛み潰すように言った。その声は悲壮で、患者をこんな状態にまでしてしまったことをひどく後悔しているようだった。
「……んだよ、それ」
宵は弘行から手を放し、志穂の病室に走った。
勢いよくドアを開け、ベッドに横たわる志穂の手首を乱暴に掴む。
「なんで……っ、こんなんなるまで何にも言わねーんだよ!!」
問いつめるように言う宵に、志穂は力なく笑った。
「……心配かけて……ごめんね」
弱々しくもれたのはそんな言葉で、宵はそれ以上何も言えずに志穂の手首を放した。
やつれた志穂の手首は細くて――細すぎて、強く掴んだら折れてしまいそうだった。
栗色の髪は短く切られ、口もとには酸素マスクがはめられ、腕には点滴がいくつも施されていた。
そんな志穂の姿はなんだか痛々しくて、宵は視線をそらし、爪の痕が残るほどこぶしを強く握りしめた。