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恋花火
第23章 S/S
何度も絶頂を迎えた身体は気怠く


激しいSEXの余韻が、甘い痺れとして僅かに残っていた。


よく、SEXのあとのオトコは冷たいだとか、さっさと現実に戻ると言うけれど


そんなこと、ない。


陸先輩はSEXを終えた後も、呆然と横たわる私をずっと抱きしめてくれていた。


「……大丈夫?」


頷くのが精一杯。


大丈夫なんかじゃない。


着替えも出来ないほど、身体に力が入らない。


「服着ないと風邪ひくよー」


それでもまだ身動きの取らない私に、陸先輩はククッと笑った。


その笑い方、好き。


SEX中のSっぽい陸先輩はもうここにはいなくて、いつもの優しい陸先輩。


思わず甘えたくなる。


「どーしたー」


タオルケットにくるまったまま、陸先輩にくっつく。


あったかい


気持ちいい


いい匂いがする


お互い生まれたままの姿のため、胸に抱き寄せられるとトクトクと鼓動が耳に伝わる。


……赤ちゃんに戻った気分。


きっとママのお腹にいるときは、こんな気分なんだろうな……


ふと顔を上げると、陸先輩はそれに気が付いてまた、笑顔をくれる。


なんでこんなに優しいの……


「…菜月ちゃんこそ、スルメみたいじゃん。」


それってあの日の私の台詞。


噛めば噛むほど味が出て、知れば知るほど______


「菜月ちゃん」


名前を呼ばれるが、ものすごい眠気によって返事が出来ない。


返事の代わりに、陸先輩の背中に回してる手にグッと力を入れた。


「……好き。」


私も


私もだよ


こんなに誰かを好きになるなんて


タケル以外の人を、好きになるなんて


もうSEXする体力はゼロに等しい


けれど私たちは口づけを交わした。


唇から伝える想い


唇から伝わる想い


優しく交わされるそれは、心地よく胸に響く愛のメッセージ


そんな夢見心地な時間は


部屋に鳴り響く着信音にて中断された。

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