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Complex
第3章 変化
翌週、ジムに顔を出すと山口が復帰していた。

「すいません、迷惑かけて」
「いえいえ、私なら大丈夫ですよ。山口さん、大丈夫です?」

曖昧に笑みを返した後は、いつも通りの山口に戻っていた。

よっぽど身近な人間を亡くしたのだろうか。
聞きたい気持ちをなんとか押し殺して、山口と向かい合う。

「もう二週間です?ここに通って。髪型だけじゃないですよね、見違えました」

山口は体を温めている友香の横で微笑む。

たったの二週間だけれども。
体重は1.5キロ減っている。
けれどそれ以上に、活動を忘れていた筋肉が復活したのだろうか。
全体的に、少しずつだけれども、体のラインが変わったのが自分でもわかる。
堀場が言っていたっけ。
どんどんラインが変わる楽しい時期。

ここからは停滞期が訪れるのかもしれない。
それでも、この時期を忘れないようにしようと思う。

「あれー?山口君、久しぶりー」

腹筋を鍛えるマシーンで汗を流していると、綾瀬が近付いてくる。

「いえ、申し訳ありません、長く休みもらっちゃって」
「いやいや、別に俺はいいよ」

そう言いながらも、二人は昔からの友のように会話を弾ませている。

しばらくして綾瀬は自らのトレーニングに離れてしまった。

「小林さん、綾瀬さんと何かありました?」
「え?」
「あ、別に何もなければいいんですけど。なんか綾瀬さん、今までと対応違うように見えて」

そうなのだろうか。
なぜだろう。
金曜の誘いを断ったからだろうか。
先ほどの山口との会話の時も、話しかけられるどころか、目も合わなかった気がする。

何もした覚えはないのに。

物足りなさを打ち消すように、友香は目の前にあるトレーニングメニューに全力を注いだ。
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