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純の恋人
第2章 三人の男
私のベッドを、三人の男性が囲んでいた。初めに声を掛けてきたのは、社会人らしい、きちんとした黒髪とスーツの人だった。
「――本当に、覚えてないのか? 嘘だろ純、僕が恋人だって事も、分からないのか!?」
中学生の頃まで戻ってしまった私にとって、その人は大人過ぎた。実際は三十路前後で、私とそれほど離れている訳ではないんだけれど。恋愛対象、ましてや恋人だったなんて信じられなかった。
真面目そうな彼は私の手を取ると、悲しそうに顔を歪める。けれど二人目の男性、私の肉体年齢よりは年下の人が、彼を突き飛ばし私の肩を揺さぶった。
「騙されるな、純! 純の彼氏は、俺だ!」
私が事故に遭ったと聞いて、職場から飛び出して来たのだろうか。つり目で強気そうな彼は、土に汚れたつなぎを着ている。そんなに心配してくれる相手も、私には全く覚えがなかった。
「嘘を付いているのは昌哉の方だろう! お前がいつ、純の彼氏になったんだ!」
「雅樹さんこそ、純が記憶喪失になったからって嘘を刷り込みしようなんて最低じゃないッスか?」
二人は大声で怒鳴り合いを始めるが、それを間に入って止めたのが、三人目の人だった。