この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
純の恋人
第11章 過去から、未来へ
「そんなに焦らなくても、分かってますよ。だって私達は、相棒ですからね」
「だから、その恥ずかしい呼び方はやめろって言ってるだろ」
国重さんは顔が赤くなったのを誤魔化すように、テーブルへ肘を付く。何回か照れてる姿は見たけれど、こんな時の国重さんは少しだけ親しみやすい気がする。私はジョッキを握ると、国重さんに向けた。
「乾杯しませんか? せっかく、久々のお食事ですし」
「乾杯って、もう俺の方はほとんど空けてるぞ」
「いいんです、こういうのは雰囲気なんですから」
国重さんはしばらく眉をしかめていたけれど、ほとんど中身の残っていないジョッキを手に取る。
「それじゃ、乾杯です」
まだ、全てが終わった訳じゃない。裁判が始まれば私も証言しなければいけないし、罪が確定しても、晴久さんは償う気持ちを持たないかもしれない。
けれど、それでも時は進む。過去を振り返らず、前へ進んでいく。その中でまた過ちを犯す事もあるかもしれない。
けれど、私は大丈夫。過去は変わらなくても、人は変われると知っている。そう教えてくれた人がそばにいるのだから。
おわり