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純の恋人
第11章 過去から、未来へ
「別に償いのつもりじゃない。俺がそうしたいから言ってるんだ」
「でも、国重さんは私だけじゃなくて街の人皆を守らなきゃいけないです。私にばかり気を取られちゃいけませんよ」
すると、なぜか国重さんは可哀想な人を見るような瞳を私に向ける。なんだろう、何か私は残念な事を言ったんだろうか。
「ったく、少しは察しろ。なんで記憶を取り戻したら、戻る前より鈍くなってんだ」
「え? ご、ごめんなさい」
「いいか、俺は――」
けれどその時、テーブルにジョッキを持った店主らしきおじさんがやってくる。そういえば、私さっきビールも頼んだんだっけ。おじさんはテーブルにビールを置くと、国重さんににやけた笑みを向けた。
「お兄さん、彼女にプロポーズするなら、もっと雰囲気のあるところにしなよ」
「っ、そんなんじゃねぇよ!」
「あははは、照れちゃって。ま、しっかりやりなよ」
気さくなおじさんが手を振り厨房に戻ると、国重さんは苛ついた表情で眼鏡を上げる。
「お、お前も妙な勘違いはするなよ。俺はただ警官として正しい行為を心掛けていきようと思っているだけで――」