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獣日和
第1章 はじまり
我に返った時は、既に遅く。
「決まりな。今週中には荷物運ぼうか」
「ちょ、ちょっと待って。私やっぱり……」
慌てて弁解しようとすると、樹が顔を覗き込んでくる。
「ふみ、自信ないの? 俺達と一緒に暮らしたら、好きになりそう?」
「……違う。兄弟みたいな二人を好きになるわけないよ……」
「じゃあ、ただのルームシェアって事で良いだろ? 今までだってお互いの家に泊まった事、何回もあるだろ?」
「うっ……」
至近距離で見つめてくる真剣な瞳に、負けてしまいそう。
樹の言うとおり、ルームシェアだと思えば簡単に住む事が出来る。
正直、おいしい話だ。
家賃もタダで、家事も全部しなくて良いなんて……喉から手が出るぐらいここに住みたい。
それも……二人と結婚しなくて良いなら、だけど。
「……もう一回言うけど、二人とは結婚しないし、好きにもならないよ……。それでも良いんなら……暮らす。この部屋で」
樹の目から目をそらしながら、ポツリと呟く。
そんなふみに対し、嬉しそうに笑顔を咲かせると、二人は両手を広げてふみの体に飛びついた。