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逆襲のフィメス
第1章 プロローグ 夜の始まり
「ねえ、お顔を見せて下さらないの? それじゃキスもできないわ……」

 誘い言葉で口火を切ってしまったのは、傷つけられた商売女としてのプライドのせいなのか。

 フードの下から答が返る。

「思い出すよ。そんな風に……言わせてみたいと思っていた女がいたのを」

「あら……?」

 舞い姫は首をかしげた。

 意味が分からない。

 いや、思い出話がしたいのだろうが、顔を見せてとの誘いに応じてこれか。その先の展開が、この相手の思惑が読めない。

 コケティッシュな表情のまま、どう返したものかと考えあぐね、大きな瞳を更に見開いて、言外に説明を促す女。

「わからないのか……?」

 そう言って、フードの人物がグラスに指を伸ばし、注がれていた酒の中にひたす。

 そして濡らした指先をテーブルの上に走らせと、踊り子の顔色が変わった。

 青ざめ、身中に生まれた恐怖と驚きを隠せぬままに、目の前の人物の正体に真剣に思いを巡らせる。

「あ、あなた……一体……誰!」
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