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逆襲のフィメス
第8章 破られた契り
※ ※ ※
「暴れるなっ! おとなしくしろっ!」
取り押さえられてなおも抗うログスの腕をねじりあげ、そのまま地面へと膝をつかせるラフィン。
背丈はログスと変わらぬとはいえ、筋量では劣る女の身でありながら、流れるような動作で造作もなく、逞しいログスの無力化をやってのける所は鍛え抜かれたフィメスの女戦士ならではだったが、気も狂わんばかりにサヤに駈け寄ろうとするログスの抵抗に、さしもの彼女も息を荒げている。
「……どうしたのかしら?」
そこへやって来たのはキーラだった。
「なんでもねぇ、いつもの事だ。どうせ夫婦なんだろ……」
フィメス女には夫婦という概念がない。女しかいないのだから他国、他民族では当たり前の婚姻の習慣がないのだ。
だが、「恋人」という概念はあったし、それに近いものとして「夫婦」を理解できる者はいる。
「あらぁ、素敵ね……愛する妻が他の男に抱かれるのが嫌なのね……憧れるわぁ……」
キーラが少女然とした顔を輝かせる。
「ねぇ、ラフィン……私、良い事考えたの。今から……」
そう言いながら、キーラは小柄な体でしゃがみ込み、絶望に打ちひしがれてなお精悍なログスの横顔に人差し指を這わせる。
その愛くるしい瞳が妖しく潤んでいた。