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ただ一つの一対
第11章 オマケ 奇跡の少女
「音の響きは、男の子でも使えるでしょう? つばさとかまさきとか、そんな名前の仲間です」
「仲間じゃねぇよ。まあ、それを言うなら蓮だって普通は野郎の名前だし、お前の嫁も男みてぇな名前だがな」
「じゃあ男が椿でもいいじゃないですか。そうでしょう、菖蒲」
「え? あたしは、パパがいいならいいけど」
まだ性別も分からない子をいたわり、菊は菖蒲のお腹を撫でる。
「決めました、この子は椿にしましょう」
「結局俺の意見丸無視で決めんなら、初めから聞くんじゃねぇよ」
「そうですね、時間の無駄でした」
「この……っとに可愛くねぇ」
則宗は拳を握るが、蓮がまた泣いてしまうような真似は出来なかった。苛立ちながらも、この日は喧嘩沙汰にならずに時を過ごした。
本家へ出入りしている幹部達にも蓮を紹介し、夕飯をご馳走になった一家。自宅へ帰る頃には、もう蓮はすっかり夢の中へ漂っていた。
「ねぇ、帰ってきて良かったの?」
蓮を寝室へ寝かせ、リビングのソファに座ると、菖蒲は隣の菊へ訊ねた。
「ここが僕の家ですから、帰るのは当たり前でしょう?」