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ただ一つの一対
第11章 オマケ 奇跡の少女
「でも、本家に戻ってもいいって言われてたでしょ。あたしとか蓮に気を遣ってるなら、遠慮しないで戻ってもいいんだよ」
跡を継ぐなら、離れて暮らすよりも本家へ戻る方が近道である。だが菊は、首を横に振ると菖蒲の肩に手を回した。
「今のあの人は、孫可愛さに言っているだけです。究極蓮さえいれば、僕などいらないんですよ。それでは、駄目なんです。僕自身が、奴に認められなければ」
「パパは、そういうところ真面目だね。大丈夫、きっと全部上手くいくよ。だって、パパは強いから――」
菖蒲は身を寄せ目を閉じ、二人分の幸せを感じる。則宗の態度に変化が現れたように、明日明後日に変わらなくとも、十年後はどうなっているかは分からない。遠い未来、菊がどこにいるのか。傷付き血や涙を流しても決して膝を付かなかった姿を見れば、菖蒲に不安はなかった。
新たな命は、この瞬間も成長し続けている。年を越え、長男として生を授かる『一文字 椿』が産声を上げる日も、すぐそこへと迫っていた。
おわり