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ただ一つの一対
第3章 ただ一つの欠陥
「そういうもの……なのですか?」
「だから稀に、女児でも華の開いた者がいるでしょう? 若は、そういう女児を見つけるのがお得意じゃありませんか」
片倉が軽口を叩けば、さらに菊は機嫌を損ねて膨れる。
「もちろん中には、華の価値をいつまでも自覚しない女もいるでしょう。しかし一度花園までの道を開いてしまえば、後は早いですよ。獣が気まぐれにでも通れば、そこは小さな道になります。もちろん何度も通れば段々地面は踏み固められ、開かれたものとなるでしょう。少女を女にしたくないなら、くれぐれも余計な詮索はしないように」
「僕が獣だと言いたいのですか。それくらいの分別、造作もありません」
「それなら良いのですが。しかしお忘れなく、獣道を通るのは、獣だけではありませんよ? 少女自身も、それをなぞる事は可能です。ただの一度だって、そこに到達してはいけませんよ」
片倉の言葉に、菊は心臓が跳ねる。と同時に、また車がスピードを落として止まる。
「……片倉、だから止まるなと言っているでしょう」
「若、それでは赤信号で突っ込めと?」
よくよく外を見れば、交差点では左右へ車が行き交っている。菊は罰が悪そうに口を閉じると背もたれに深くもたれかかった。