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ガラスの靴がはけなくても
第6章 年下の男の子

お疲れ様と合わせたビアグラスを持ち上げ、喉に琥珀色の液体を流し込む。
仕事終わりの一杯、今週は特に忙しかっただけあって美味しさも格別。


雑談してるうちに運ばれてきたシーザーサラダに焼き鳥の盛り合わせ、おろしポン酢のからあげなどなど。
どれも定番なメニューなのに一工夫されていてとっても美味しい。


「これお酒に合いますよ」


差し出された小鉢にはぷるりとしたなにかがおそらくもみじおろしで和えられてある。
箸で持ち上げる感触的にゼリーでもない。
食べたことないそれを恐る恐る口に運んだけど、


「…ん、美味しい!でもこれなに?」


ちょっとピリッとしててなんとも言えない歯ごたえがイケる。


「クラゲ」


「え?クラゲ?」


「そう。あの海に泳いでるあのクラゲですよ。食べたの初めてですか?」


「うん。初めて…かな?多分」


「うわ、もしかして俺藤野さんの初体験もらっちゃった?」


「いや、その言い方なんか違うよね?それを言うならあげたのはこのクラゲにだよ。初クラゲ」


「え~いいなこのクラゲ。俺も藤野さんの初体験欲しい」


「ねぇ、そのなんか誤解されるような言い方やめてくれない?」



箸で挟んだクラゲをぷるぷるさせながら笑う澤村くんに、行儀が悪いなんて言って笑う私はなんだかんだでこの場を楽しんでるに違いない。



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