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ガラスの靴がはけなくても
第6章 年下の男の子
酔い潰れていた私をタクシーで送るつもりで、香織さんに家を尋ねようとしていたらしい澤村くん。
そこに部長が声をかけてきたって言う話なんだけど。
そこまではなんとなく部長に聞いてたから、流れは分かってた。
問題はそこでの私が知らない二人の会話だったらしい。
俺が送って行くと突然申し出てきた部長に、最初は上司として直属の部下の心配をしてるんだと思っていたと。
それだったらと部長の手を煩わせるからと澤村くんが断った時。
「"男として言ってるんだよ"って俺に言っちゃうんですよ?」
その時の光景を思い出しているかの様に目を細める。
「立場だってあるのに男を優先させちゃうんだもんなぁ。なんか、すっごい悔しいけど一瞬で負けたって思っちゃったんですよね」
だから、これは部長に対しての細やかな抵抗だと握る手に力を込められた。
「それでも、藤野さんの気持ちだってあるわけだし、どうしても!一回くらいのチャンスは欲しかった。入社した時から可愛いって思ってた人が彼氏と別れたなんてこんなチャンスないでしょ?」
「澤村くん……」
「まぁ、今はその藤野さんの気持ちも分かっちゃったから余計に悔しいんだけど。勝負する前に負けちゃって悔しいついでに余裕綽々な笑顔で桐谷部長がなんて言ったのか教えてあげます」
にっこりといつもの爽やか笑顔を見せてくれたあと、耳元で囁かれた部長の言葉であろう言葉に思わず赤面した。
………やっぱり部長には敵わない。