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ガラスの靴がはけなくても
第8章 眠りたくない夜
好きだと言葉に出してしまえば部長への気持ちはこんなにも揺るぎないものになるのに。
なにをあんなに悩んで気付かないふりまでして、自分の本当の想いを隠そうとしていたんだろう。
悩んでいた自分が馬鹿らしくなった。
だって、今はこんなにも部長が好きだって大切だって温かい気持ちで心の中はいっぱいだから。
シトラスの香りに包まれながらされるキスはいつだって優しくて私を素直にしてくれる。
やっと、涙も止まって優しいキスも終わった時……
「俺の家か藤野の家かホテル」
「え?」
「どこがいい?選ばせてやるよ」
「えっと……?」
「まさか帰れると思ってないよな?あんな熱い告白までしてくれといて」
甘いだけじゃなくて一気に艶っぽい笑みを向けてくるから。
それにドキドキさせられるのはもう条件反射みたいなもので。
「……なら、私の家で」
頬を赤く染め小さな声で俯いて答えた言葉に、よしよしと頭を撫でると車を発進させた。