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ガラスの靴がはけなくても
第8章 眠りたくない夜
当たり前かの様に一緒に入らないのかとたずねてくる言葉を丁重にお断りして、部長が出てくるのを待って私もシャワーを済ませた。
一人で部長を待っているあいだもシャワーを浴びてる間も冷静になんてなれなくて。
だって今私の家に彼がいる。そしてこの後のことを考えると落ち着くことができない。
それでも覚悟を決めて少しだけ震える手で頭を乾かすと、リビングで待つ部長の元へとドキドキと苦しいくらいの胸を押さえて向かう。
ソファーに座ってテレビを見ていた彼は、私に気付くとおいでと手招きをする。
さっき買ったばかりのスウェットパンツにTシャツ。綺麗な漆黒の髪をセットせずに下ろしていて、ラフな姿を見るのは前に部長の部屋で見たのと合わせてこれで2回目。初めてではないにしろ、いつものスーツ姿を見慣れているせいか雰囲気の違いに少し戸惑う。
どっちの姿も素敵なことには変わりないんだけど。
そして、彼も私の変化を見つけては
「可愛い。化粧を落とすと幼くなるんだな」
そんな甘い言葉で褒めてくれる。
「寝室はあっち?」
そう聞かれても緊張で声も出ない私はただ頷くだけ。