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ガラスの靴がはけなくても
第3章 理性と本能
心臓がバクバクと打ち鳴り身体中に警告音が響き渡る。
嫌な予感がしてた。だから、早くこの空間から出て行きたいと思ったのに。
今までの経験からしてこの状況が非常にまずいことは一目瞭然で。
だって部長の色気がハンパじゃない。
いつものシトラスの香りが香水じゃないことに気付く。石鹸なのかシャンプーなのか分からないけど、お風呂上がりの部長からはいつもよりきつく香っていて。
まだ濡れた前髪の間から私を見つめる切れ長の目が妖しく光ってる。
「藤野は甘い。こんなに簡単に家に連れ込まれて、腕に閉じ込められて」
「いっ、…や!」
「自分に気がある男に迫られて連絡先まで交換してるし」
「…ッ!見てたんですか!?」
ありえない。
そんなとこまで見られてたなんて…!
「部長に、は…関係ないです」
その言葉にピクリと綺麗な眉を上げると眉間にシワを寄せた。
こ、怖い!
ちょっと何でそんな顔されなきゃいけないの!?
私おかしなことなんて言ってないのに。
理不尽過ぎるとは思いながらも、口から出てしまった言葉を消してしまいたいと思った。