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写性 …SHASEI…
第12章 芍薬
春になり、庭の門近くの桜が満開になる。
本来は訪れる人を出迎える美しさなのだが、
門の番人のように立ちはだかり、出口を隠すように花びらは散っていく。
春爛漫、花いっぱいの季節が始まる。
僕はまた、沙絵の誕生日プレゼントに頭を抱えていた。
あれこれ思い悩んでも仕方ない。沙絵にストレートに訊いた。
「お父様、私の絵を描いて欲しいの。」
それは普段当たり前にしていることで、もっと別のものをと、絵の具のセットを用意した。
誕生日を祝い、翌日、沙織の命日に偲んで、そのあとから絵を描き始めて欲しいと頼まれた。
ケーキに蝋燭を6本立てる。
歌は歌わないでくれ、おめでとうと言わないでくれと言われていた。
火を灯して、沙絵に言う。
「沙絵、お誕生日、六歳になったね。一つお姉さんになったよね。今年もまた一緒に過ごしていこうね。」
僕が言い終えるのを聞いて、沙絵は蝋燭の灯を吹き消した。
「お父様ありがとう。」
沙絵は静かに微笑んだ。
私は悲しくない誕生日を過ごしたかった。
おめでとうと言われるとお母様のことを思い悲しくなる。
だから、歌やおめでとうのない誕生日にしてもらった。
本来は訪れる人を出迎える美しさなのだが、
門の番人のように立ちはだかり、出口を隠すように花びらは散っていく。
春爛漫、花いっぱいの季節が始まる。
僕はまた、沙絵の誕生日プレゼントに頭を抱えていた。
あれこれ思い悩んでも仕方ない。沙絵にストレートに訊いた。
「お父様、私の絵を描いて欲しいの。」
それは普段当たり前にしていることで、もっと別のものをと、絵の具のセットを用意した。
誕生日を祝い、翌日、沙織の命日に偲んで、そのあとから絵を描き始めて欲しいと頼まれた。
ケーキに蝋燭を6本立てる。
歌は歌わないでくれ、おめでとうと言わないでくれと言われていた。
火を灯して、沙絵に言う。
「沙絵、お誕生日、六歳になったね。一つお姉さんになったよね。今年もまた一緒に過ごしていこうね。」
僕が言い終えるのを聞いて、沙絵は蝋燭の灯を吹き消した。
「お父様ありがとう。」
沙絵は静かに微笑んだ。
私は悲しくない誕生日を過ごしたかった。
おめでとうと言われるとお母様のことを思い悲しくなる。
だから、歌やおめでとうのない誕生日にしてもらった。