この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
写性 …SHASEI…
第19章 来訪者
その日の夕飯に私は思い切ってお父様に聞いてみた。
「絵を習いに来ている人の名前、なんていうの?」
「わからない、聞きそびれたままなんだ。」
「なんて呼んでるの?」
「あなたか奥さんだね。」
「奥さんて何?」
「結婚してる女の人の呼び方だよ。」
「お父様はなんて呼ばれているの?」
「先生」
「お父様はその人のことを好き?
私やお母様より愛してる?」
「沙絵や沙織を今まで通り愛してるよ。」
まとめて聞いてしまい、はぐらかされたようだったので聞き直した。
「その人のことは?」
「好きだよ。愛している。」
やっぱり、もう名前もわからない人のことで、お父様の頭の中はいっぱいなんだ。
「ご飯終わったら、アトリエの奥の部屋にあるお母様の絵が見たい。」
私が見たいわけじゃなく、お父様に見てもらいたくて、お母様を忘れて欲しくなくて、言ってみた。
もう、いつかのクリスマスに、お父様にもサンタクロースからのプレゼントが届くようにと、願っていたことなど忘れて、
お母様を、いや私を忘れてしまうのではないか、
それだけが心配だったのだ。
「絵を習いに来ている人の名前、なんていうの?」
「わからない、聞きそびれたままなんだ。」
「なんて呼んでるの?」
「あなたか奥さんだね。」
「奥さんて何?」
「結婚してる女の人の呼び方だよ。」
「お父様はなんて呼ばれているの?」
「先生」
「お父様はその人のことを好き?
私やお母様より愛してる?」
「沙絵や沙織を今まで通り愛してるよ。」
まとめて聞いてしまい、はぐらかされたようだったので聞き直した。
「その人のことは?」
「好きだよ。愛している。」
やっぱり、もう名前もわからない人のことで、お父様の頭の中はいっぱいなんだ。
「ご飯終わったら、アトリエの奥の部屋にあるお母様の絵が見たい。」
私が見たいわけじゃなく、お父様に見てもらいたくて、お母様を忘れて欲しくなくて、言ってみた。
もう、いつかのクリスマスに、お父様にもサンタクロースからのプレゼントが届くようにと、願っていたことなど忘れて、
お母様を、いや私を忘れてしまうのではないか、
それだけが心配だったのだ。