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写性 …SHASEI…
第19章 来訪者
その日の夕飯に私は思い切ってお父様に聞いてみた。

「絵を習いに来ている人の名前、なんていうの?」

「わからない、聞きそびれたままなんだ。」

「なんて呼んでるの?」

「あなたか奥さんだね。」

「奥さんて何?」

「結婚してる女の人の呼び方だよ。」

「お父様はなんて呼ばれているの?」

「先生」

「お父様はその人のことを好き?
私やお母様より愛してる?」

「沙絵や沙織を今まで通り愛してるよ。」

まとめて聞いてしまい、はぐらかされたようだったので聞き直した。

「その人のことは?」

「好きだよ。愛している。」

やっぱり、もう名前もわからない人のことで、お父様の頭の中はいっぱいなんだ。

「ご飯終わったら、アトリエの奥の部屋にあるお母様の絵が見たい。」

私が見たいわけじゃなく、お父様に見てもらいたくて、お母様を忘れて欲しくなくて、言ってみた。


もう、いつかのクリスマスに、お父様にもサンタクロースからのプレゼントが届くようにと、願っていたことなど忘れて、
お母様を、いや私を忘れてしまうのではないか、
それだけが心配だったのだ。
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