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写性 …SHASEI…
第20章 影
実際の沙絵は七五三の色の着物を着てはしゃいでいたが、六歳の時のポーズを取ろうとするので、
着物の柄の美しさも描きたいからと説明し背面を向かせたのだ。

ところが、いざ筆を取り、肩を見せるだけでいいと言っただけで、
天性の妖艶さを垣間見せる色絵に仕上がった。

あれは沙絵にしか出来ない。貴女にこの絵を見せたら、きっと恥ずかしがりモデルの申し出を取り下げるだろうと、敢えて見せたのだった。


なのに貴女は、きちんと考えた上で、絵にして欲しいと言い切った。

寒い冬に小さいが清楚な花をつける水仙のような強さと美しさを持つ貴女に、すでに心惹かれていたが、
モデルになるという時点で更に興味を持った。


沙織は花に例えるなら百合、高貴な印象もありつつ控えめで、なのにその香りにも魅せられる。


沙絵は薔薇、深紅より濃い赤い薔薇、香り高き花、棘を持つ花、それでいて皆に愛される花。


貴女と庭の花を見て回り、花を羨む貴女に、薔薇のようなくどい美しさはなくとも、水仙のようだと、花になぞらえた時点で、
沙絵よりも惹かれてしまっていたのだろうか。


背面の女の絵を見せたのは、これ以上僕の心に染み入らないで欲しいという拒絶だったのかもしれない。
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