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第26章 覚醒

ｺﾝｺﾝ…

｢沙絵、夕飯を食べよう。｣

昼御飯は食べないまま、寝てしまったらしい。

お腹も空いていないし、気持ち悪い。

｢食べたくない。まだ寝たい。｣

｢沙絵、鍵を開けてくれないか？｣

｢今はお父様と話したくない。｣


昼から食べずに閉じ籠もる沙絵が心配で声をかける。話したくないと言われ、初めて鍵をかけられて戸惑った。

それだけのことを沙絵にしたのだから仕方ないが、沙絵が心配だ。

二人きりの生活で互いに都合の悪い部分には触れないようにしてしまったツケだ。

｢お腹が空いたら食べてね。冷蔵庫に入れておくから、僕はアトリエにいて会いたくないなら、一人で食べにおいで。｣

｢わかった。｣


アトリエで絵を描きながら考える。
これからどうしていったらいいのか…

沙絵を育てる。沙織との約束だった。約束を果たすために引き取ったのか？

いや、沙織の二の舞にさせたくなかったからだ。

親を知らない寂しい思いもさせたくない。
失いたくない。

二人きりの世界に閉じ込めて、愛を履き違えて暮らしてきたのに、いずみの出現で邪険にしてしまった。

深夜になっても食事に出てこないのでもう一度部屋にいく。