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写性 …SHASEI…
第27章 葱
家庭菜園に葱の花が咲く。丸いぼんぼりのような花だ。
小さな白い花と毛の集合体だ。花からも独特な葱の匂いがする。

「お父様、葱を引っこ抜いていい?」

「いや、必要な分だけ切って…」

「どうして?」

「葱は再生能力が高いんだ。だから、切ってもよく成長するからね。伸びたらまた使う分だけ切ればいい。」

「ふぅん…強いのね。

私たちも今、この最中なのかなぁ…」

沙絵はポツリと言って、切り口から出る汁を掬って舐める。

「辛い。」

「そうだよ。葱の味でしょ?

確かに、僕たちは、今、再生の最中かもね。間違えても何度もやり直していこうね。」

「うん。」




沙絵とは今まで通り一緒に風呂に入り、僕の寝室で一緒に寝ている。

いずみが来なくなって溜まる欲は、アトリエのいずみたちを相手に自己処理していた。

沙絵に欲情することはないし、沙絵が誘ってくることもなかった。
そして敢えてそのことを話題にすることもなく平穏に過ごしていた。

曼珠沙華の季節を迎えても、僕は平静でいられた。
いずみとの出会いで、沙織はもう生きていないということをはっきりと自覚できたし、
沙絵にそれを求めていた間違いもはっきりしたからだと思う。
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