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写性 …SHASEI…
第39章 桜
「貴女は気づいていないようだが、沙絵が何度か貴女たちとすれ違ってるんですよ。」
「そうでしたか。」
「あの時妊娠していて体調が優れなかったんでしょうね。
男の子だそうですね。」
「は、はい。」
「お子さんに恵まれてご家族仲良くなれて良かったです。」
「先生…」
私は静かにノブを回しアトリエの二人を見る。
いずみさんは背を向けていて気づかない。
お父様は黙って私が覗くのを許してくれた。
「一つ聞いてもいいですか?」
「はい。」
「塀の絵を見て、思い出話をしにいらしたのですか?
それともまだ僕への気持ちがあると思っていいですか?」
「先生…思い出なんて…
ずっと…ずっと…ごめんなさい…逃げ出したままにして…」
「ああ、また泣かせてしまいましたね。ご覧なさい。」
お父様が立ち上がり、いずみさんを思って描いた絵をいずみさんに見えるようにした。
「貴女を描いていましたよ。」
色紙より一回り小さな紙に百合が描かれている。
「百合…ですか?」
水仙でないのにワタシという意味がわからなかった。
「体に訊くのが一番ですね。」
「そうでしたか。」
「あの時妊娠していて体調が優れなかったんでしょうね。
男の子だそうですね。」
「は、はい。」
「お子さんに恵まれてご家族仲良くなれて良かったです。」
「先生…」
私は静かにノブを回しアトリエの二人を見る。
いずみさんは背を向けていて気づかない。
お父様は黙って私が覗くのを許してくれた。
「一つ聞いてもいいですか?」
「はい。」
「塀の絵を見て、思い出話をしにいらしたのですか?
それともまだ僕への気持ちがあると思っていいですか?」
「先生…思い出なんて…
ずっと…ずっと…ごめんなさい…逃げ出したままにして…」
「ああ、また泣かせてしまいましたね。ご覧なさい。」
お父様が立ち上がり、いずみさんを思って描いた絵をいずみさんに見えるようにした。
「貴女を描いていましたよ。」
色紙より一回り小さな紙に百合が描かれている。
「百合…ですか?」
水仙でないのにワタシという意味がわからなかった。
「体に訊くのが一番ですね。」