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写性 …SHASEI…
第45章 旅立ち
『塀の向こうには何があるの?』

『あの向こうには何もないよ。沙絵と僕の世界はあの塀まで、塀の向こうはずっと真っ暗なんだよ。』

白と黒しかなかった二人きりの世界。

色とりどりの花に囲まれても私はそこに色を見いだせなかった。

あの日をきっかけに外の世界を知り、翔に出会って私にも色のある世界が生まれた。

いずみさんとの再会で、生きる意味を、愛の強さを教えられ、もう一度生まれた。

今、暗闇の中で黒い塀を出て、黒い世界に飛び出した。

大丈夫。庭の花々の賑やかな彩りが鮮やかに浮かぶ。

外は何もない世界ではない。私はここを離れ、もっと大きなものを掴みに出るのだ。

私は黒い門扉を閉ざした。

車で空港に向かう。
車内でもロビーでもお父様と懐かしい話をした。

「沙絵、何かあったらすぐ連絡して戻ってきていいんだからね。」

「お父様、悪いけどある程度落ち着くまで連絡しないわよ。」

一年間シュミレーションして話したことをまたお父様は言ってくる。

「沙絵、無理しないで…」

「大丈夫よ。写真の勉強して、独り立ちして、ナイスガイを見つけるわ。」

ギリギリまで出発ロビーで話し、搭乗口をくぐる。
私は一度だけ振り向いて笑顔でお父様に手を振り、そのあとは振り向かなかった。
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