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痴漢脳小説 ~秋津高校サッカー部~
第6章 少女達の気持ち
 言葉が出てこない。自分の気持ちも分らない。
 こんなに可愛い子なのに。その子が自分を好きだと言ってくれているのに。

 喜んで飛び付きそうなものなのに、何でそうならなかったんだろう?
 何でそれが出来なかったんだろう?

 去っていく美緒ちゃんの後姿。長い髪が歩くたびに揺れている。
 部室の裏から覗いた、あの時もこんなふうに美緒ちゃんの後姿を見ていたっけ。

 …ああ、そうか。

 ヒデだ。

 ヒデはきっと美緒ちゃんのことが好きなんだ。言葉に出して聞いたことがあるわけじゃないけど、何となく分る。

 ヒデは俺の親友だ。

 サッカーの天才で痴漢野郎で、大人しいくせにサッカーになると厳しくて頑固で、そして一緒にいて楽しい奴。

 俺のプレイが必要だと、そう言って認めてくれた奴。

 そのヒデを裏切れないよな。

 そして俺は、そんなことはただの言い訳で、本当は自分に自信がないだけなのをよく知っている。
 
 気が付けば美緒ちゃんの後姿は暗がりの中に消えてしまった。

 ごめん、美緒ちゃん。
 でも、ヒデはいい奴だよ。

 ぐにゃり。視界が滲んで前が見えなくなった。

 
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