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痴漢脳小説 ~秋津高校サッカー部~
第8章 準決勝 武蔵西武戦
 試合開始のホイッスル。

 武蔵西武は4-5-1のフォーメーション。鉄壁のGK川嶋。ディフェンスには高さと上手さを兼ね備えたセンターバック、七澤と田丸。両サイドには運動量の多い永友と安定感抜群の小間野。
 ボランチには守備力の高い矢部とチームのバランサーでキャプテンの長谷川。
 攻撃的MFにサイドアタッカーの松田と玉井。センターにゲームメイカーの仲村。
 ワントップにはうちのヤマと得点王を争う小久保。

 分りきったことながら、武蔵西武は強かった。
 前半開始早々からMF仲村が左右にボールを散らし、こちらの守備を翻弄する。

 こっちも井口を中心とした守備陣系で跳ね返すも、MF矢部にセカンドボールを奪われ波状攻撃を仕掛けられた。
 玉井の突破を北村が体を張って止め、駆けつけたタモツと二対一の状況で追い詰めるも、後ろに戻したボールを受けた仲村が長谷川とのパス交換で守備を揺さぶる。
 そして生まれたほんの僅かな隙間に正確にパスが通る。

 底に走り込むFK小久保。
 鋭い出足で追いつくと、得点を量産している右足を降りぬいた。

 ドラゴン松茂が飛び込むも、伸ばした指先をかすめ、ボールはゴールネットを揺らした。

 前半三分。開始早々の失点だった。

 これが俺達にとって今大会初の失点。しかも試合開始早々の失点。
 前回の大敗の記憶が蘇り、萎えそうになる俺達を立ち上がらせたのは、やっぱり頼れるエース、ヒデだった。

 プレイ再開直後、センターサークルからいきなり相手ゴールへ向けて超ロングシュートを放った。
 惜しくも、というか当然というか、このシュートは相手GKにキャッチされた。

 思いも寄らぬロングシュートに唖然とする俺達に、ヒデは悠然と振り返った。

「まだ試合は始まったばかりだよ」

 言ってヒデは笑った。

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