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痴漢脳小説 ~秋津高校サッカー部~
第8章 準決勝 武蔵西武戦
 後半も序盤は武蔵西武が攻める。気合の守備でそれを跳ね返す秋高。

 後半十分。左サイドをDF永友が突き破って侵入してきた。ゴール前にはエースの小久保。
 永友のクロスは、しかし小久保の走りこむタイミングと僅かにずれた。

 何とか体を入れ替えボールを受けるも、そこに詰め寄る本多。

 小久保の右側から体を寄せ、利き足の右を自由に使わせない本多のプレス。さらに俺がそこに駆け寄り両側から挟み込む。
 たまらず後ろに戻したボールにヤスが足を伸ばし、ボールはタッチラインの外に転がり出た。

「ナイス、本多」
「はい」

 俺の伸ばした手を力強くはたき返すも、相手のエースを抑え続けてきた本多に疲労の色が濃くなっている。
 それも仕方がない。相手は全国レベルの三年生。本多はいくら守備がうまいとは言えまだ一年生だ。
 学年差から生まれるハンデを俺達は去年、いやってほど味わっている。

 守備のバランスが少し狂うがタモツにフォローをさせようかと思っていると、

「まだ大丈夫です、やれます」

 頼もしい言葉を後輩は言った。

「ああ。小久保も少しずつ苛立ってきてる。お前の守りで攻めの歯車が噛み合わなくなってきてるんだ。お前のおかげだよ」
「はい。そう言ってもらえると」

 流れる汗を拭いながらも、本多は笑顔を見せた。

 実際、前半の影のMVPはこの地味な守備職人だったかもしれない。
 そして、前半に与え続けたストレスは、この後半に確実に効果を表してきている。

 小久保が苛立たしげにチームメイトに声をかけている。永友がそれに何かを言い返す。

 相手のリズムが狂ってきている。

 このまま耐えれば、チャンスはきっと来る。
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