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痴漢脳小説 ~秋津高校サッカー部~
第2章 サッカー部快進撃! からの…
「よう、頑張ってるな」

 週末の準決勝、武蔵西武との試合を控えたある日の練習後、バスケ部のエースが声をかけてきた。隣のクラスの田淵君だ。
 バスケ部らしく背が高くて足が長い。それに加えて爽やかなイケメン。
 ついでに言えば美人さんの彼女がいる。

「ああ、うん。まあね」

 見た目も存在もいたって普通な俺からすれば、少々気後れを感じてしまう相手だ。
 田淵君は練習後の汗が滴るいい男っぷりを発揮している。

「頼むよ、サッカー部。俺達、新設校で何も自慢出来るものもないからさ、サッカー部の活躍にはみんな期待してるんだぜ」

 俺はありがとうを言って部室に向かう。

 期待は嬉しい。勝ち続けられてもっと嬉しい。

 でも結局は中井君の力なんじゃないの?

 そんなふうに思う気持ちも、ほんの少しだけ、ある。


 俺と中井君は親友になった。そこに中学からの悪友ヤスや高校になって仲良くなったヤマが入ってくることもあって、俺の周りはとにかく賑やかだった。

 中井君と仲良くなったきっかけは、毎日のご飯。

 高校生で急な一人暮らしを始めた中井君は、食事はコンビニやスーパーの弁当で済ませることが多いそうだ。
 それを聞いたウチの両親が、一日五百円で朝と夜の食事を提供することにした。
 中井君の部屋は俺の家から近いし、俺も夕食は店内で店のメニューや残り物を食べることが多い。そこに中井君も来てもらって一緒に食事をすることにした。

 俺の両親のお節介と言えばその通りなんだけど。

 自分の親を褒めるのはあまり気持ちのいいもんじゃないけど、そういうところは嫌いじゃない。
 サッカー部期待のエースなんだから、しっかり食べて栄養をつけてもらわないといけないし、一緒に食事をしながら、元日本代表の貴重なサッカー体験談を聞くことが出来る。
 両親の提案は俺にとってもありがたかった。

 朝、中井君はウチに来て俺と一緒に朝ご飯を食べる。そのまま学校に行き部活を終えて帰ってきて、今度は晩ご飯。
 夜はヤスやヤマをはじめとするサッカー部メンバーや、時には美緒ちゃんも一緒に食事をして、それがサッカー部の一体感を生み出していく。
 いつからか中井君は下の名前の秀樹にかけて「ヒデ」とみんなに呼ばれるようになっていた。
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