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クラス ×イト
第5章 ほころビ 【乾英太2】
心の拠り所だった『D3』は、綻びを露呈してしまい。
中学時代の『元親友』とは、互いの気持ちを違えたまま。
その時に僕の心を苛んだのは、きっと『孤独』への恐れなのだと思う。
そこはかとなく怖かった僕は、迷わずに『ある場所』を目指した。
それは、いつもの教室の――『窓際の席』。
「オイ……どうした?」
先にいた西くんの前に、小柄な身体を割り込ませ。
「――!」
少し驚いた顔をしてる藍山さんの前に、僕は立っていた。
そして、じっと彼女の瞳を見つめ――
「今、どんな本――読んで、いるの?」
僕はついに、それを訊く。
すると藍山さんは、耳元の髪をそっと掻き上げ。それから、机の端に置いてある『栞』を見つめながら、僕に言った。
「読んでなんか、いない。私はいつだって、本の『途中』に挟まれている。それだけ……」
「読んで……いないの?」
コクリと頷き。藍山さんは僕を見上げて、こう続けた。
「今、私が読みたいのは、たった一つの――小説の続き」
「それは――どんな小説?」
「……」
俄かにその瞳を揺らしながら、藍山さんは答えてはくれなかったけれど……。
それでも僕は小さな一歩を、踏み出せた気がしていた。
【ほころビ――了】
中学時代の『元親友』とは、互いの気持ちを違えたまま。
その時に僕の心を苛んだのは、きっと『孤独』への恐れなのだと思う。
そこはかとなく怖かった僕は、迷わずに『ある場所』を目指した。
それは、いつもの教室の――『窓際の席』。
「オイ……どうした?」
先にいた西くんの前に、小柄な身体を割り込ませ。
「――!」
少し驚いた顔をしてる藍山さんの前に、僕は立っていた。
そして、じっと彼女の瞳を見つめ――
「今、どんな本――読んで、いるの?」
僕はついに、それを訊く。
すると藍山さんは、耳元の髪をそっと掻き上げ。それから、机の端に置いてある『栞』を見つめながら、僕に言った。
「読んでなんか、いない。私はいつだって、本の『途中』に挟まれている。それだけ……」
「読んで……いないの?」
コクリと頷き。藍山さんは僕を見上げて、こう続けた。
「今、私が読みたいのは、たった一つの――小説の続き」
「それは――どんな小説?」
「……」
俄かにその瞳を揺らしながら、藍山さんは答えてはくれなかったけれど……。
それでも僕は小さな一歩を、踏み出せた気がしていた。
【ほころビ――了】