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クラス ×イト
第8章 ウそツき 【瀬山宗助】
「無駄だから」
「え……?」
俺の言葉に、動揺しているのは――同じバスケ部の堂林亮伍だ。
たぶん、この先の話を聞けば奴は怒るだろう。そうと知りながらも、俺は話を続けていた。
「去年――地区の選抜に参加してわかったんだ。身長180そこそこ――多少、巧くて速いだけ。俺くらいの奴は、捨てるほどいる。上には上がいるんだよ」
「この野郎っ!」
案の定――感情を顕わにして、堂林は俺に詰め寄った。
「亮伍――止めて!」
マネージャーの海藤美和が、慌てて止めようとする。
だが別に――俺としては、殴られても構わなかった。
堂林はギラリとした瞳で、その猛る想いを俺にぶつけていった。
「上には上がいるだとっ? 偉そうに言うなよ。そんなこと、俺の方が知ってんだよ! だったら、そこで抗えばいいだろ。必死に練習でも何でも、やるだけやれよ。そしたら……お前だったら、きっと……」
しかしその言葉が、俺の心に響くことはなかった。
俺――瀬山宗助という人間は、そんな男。その上、嘘つきだった。
俺は自分の気持ちという部分に於いて、一つ大きな嘘をついている。それは負い目として、常に俺の中に存在し続けていた。
それ故、なのだろう。それ以外のことでは、なるべくなら嘘はつきたくない。何となくだったが、そんな想いが確かに俺の中にはあった。
だから、堂林――
「悪いな、堂林――俺はお前みたいに、強くないんだ」
これも決して、嘘じゃないんだ。