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クラス ×イト
第8章 ウそツき 【瀬山宗助】

「えっと……どうして、そう思うの?」

 眼鏡の奥の瞳をぱちくりとさせ、乾がその理由を俺に問うた。

 俺とすれば、西の奴を焚き付けてしまっている事情がある。それを思い浮べながらも、俺が口にしたのは全く違うことだった。

「俺さ――お前の気持ちも――なんとなくだが、わかる気がした」

「僕の気持ち、って?」

「もし仮に――俺が藍山のことが気になると言ったら、乾はどうする?」

 それを口にしながら、俺は自分を嫌な奴だと感じている。そしてその核心を、乾の次の言葉が、いみじくも言い当てた。

「それは……意地悪だなあ」

「どうして、そう思うんだ」

 俺が敢えてそう訊くと――

「だって……僕と瀬山くんじゃ、比べようがないんだもん」

「……!」

 俺を見て笑ったその笑顔は、卑屈なものだったのかもしれない。

 だが一方で俺は――その乾の中の奥底に、自分に近い何かを感じ取っていた。

 だから、俺は――

「乾――俺の話を、聞いてくれないか」

「え……?」

「今度は、俺からお前への――相談みたいなものさ」

「うん。僕で良かったら、話してよ」

「実は、俺――」

 俺は初めて――礼華以外を前にして、本当の自分を晒そうとしている。

 しかし――その時、だった。


「英太!」


 そんな声を発して、俺たちの元に駆け寄ったのは――同じクラスの去河要二。

「要二……どうしたの?」

「ちょっと、お前に……話が、あるんだよ」

 去河は息を切らせながら、そう乾に言った。

「話? でも、今はちょっと……」

 そう言って俺をチラッと見る乾。

 その顔を見返し、俺は言う。

「俺はいいから――もう、行けよ」


 それが幸か不幸か――なんて、俺は知らない。

 それでも、話すきっかけを失った俺は――未だ嘘つきのままだった。





【ウそツき――了】
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