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クラス ×イト
第11章 マえぶレ 【乾英太3】
「ちょっと、離れてくれないかな。それと今は、忙しいから……」

 僕が迷惑そうに言うと、ようやく市原さんは藍山さんの存在に気がついたようだ。

「あれ? もしかして私、邪魔しちゃったかなぁ……」

 うん……それが無意識なのが不思議なくらいに、見事な邪魔の仕方だったね……。

 心の中で、そんな悪態をつきながらも――

「だから、悪いけどさ――」

 僕がそう言いかけた時だった。


「――いいの」


 と、言った藍山さんは、椅子から立ち上がっている。

 そして、机の上の二冊の本を手にして、そのまま行ってしまおうとしていた。

 それを見て焦ったのは、僕。

「ちょと、待って!」

 そう呼び止めてはみるけど――


「後は私自身の――問題。だから、乾くんは――いいの」


 藍山さんはやや冷ややかに、僕に顔を向けることなくそう告げると、そのまま図書室を後にしていた。


「……」

 言われた言葉のショックを隠せずに、僕はそれを呆然として見送るだけ……。

 すると、その隣の――藍山さんがいた席に、今度は市原さんが腰を下ろしていた。

「行っちゃったね」

 そして、悪びれた様子もなく、僕を見て微笑む。

 そんな顔されたって……。

 藍山さんを追うこともできず、僕は只ひたすら戸惑いだけを覚えていた。





【マえぶレ――了】
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