この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
クラス ×イト
第13章 ぼウそウ 【喜嶋三生】
家に帰ると、起き出して来た母親が小言を聞かせた。少し前の別世界のような時間から、無理やり現実に引き戻される実感。
その瞬間の落差は、どちらが上なのか下なのか。それすら見失うと、言い様のない居心地の悪さだけが、僕の感情を支配した。
それを暫く耐えて無言で聞き流すと、僕は自分の部屋に入る。
「……」
机に向かって椅子に座るけど、別にやることなんてなかった。否、考えることさえ――なかった。
昨日まで一心に向けていた僕の想いは、完全に闇の中に葬られてしまったみたいで……。それがどんなものだったのかさえ、今はもうわからなくなってしまったようになって……。
たぶん、色々と考えて、判断すべきことはあった。
だけど、僕はすっかりと挫けてしまっているから。視界が向く場所は、自分の足元だけだった。
「…………………………」
それは――とても不安定な時間だったのだと、思う。
疲れに任せ寝てしまえば、それで良かったのかもしれない。
だけど――僕は何気に――
「……!」
机の上に置かれていた、カッターナイフにその視線を止める。
それを見つめていた時間は、どのくらいだったのだろう。
それに右手を伸ばしたのは、どんなきっかけだったのだろう。
チキチキ、と伸ばした刃を――
「……」
どんな気分で、眺めていたのだろう……か?
僕はそれを――思い出すことが――できなかった。
【ぼウそウ――了】
その瞬間の落差は、どちらが上なのか下なのか。それすら見失うと、言い様のない居心地の悪さだけが、僕の感情を支配した。
それを暫く耐えて無言で聞き流すと、僕は自分の部屋に入る。
「……」
机に向かって椅子に座るけど、別にやることなんてなかった。否、考えることさえ――なかった。
昨日まで一心に向けていた僕の想いは、完全に闇の中に葬られてしまったみたいで……。それがどんなものだったのかさえ、今はもうわからなくなってしまったようになって……。
たぶん、色々と考えて、判断すべきことはあった。
だけど、僕はすっかりと挫けてしまっているから。視界が向く場所は、自分の足元だけだった。
「…………………………」
それは――とても不安定な時間だったのだと、思う。
疲れに任せ寝てしまえば、それで良かったのかもしれない。
だけど――僕は何気に――
「……!」
机の上に置かれていた、カッターナイフにその視線を止める。
それを見つめていた時間は、どのくらいだったのだろう。
それに右手を伸ばしたのは、どんなきっかけだったのだろう。
チキチキ、と伸ばした刃を――
「……」
どんな気分で、眺めていたのだろう……か?
僕はそれを――思い出すことが――できなかった。
【ぼウそウ――了】