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クラス ×イト
第14章 カイごう 【乾英太4】
「宗助……?」
瀬山くんを、心配そうに見つめている、赤緒さん。
その頬に優しく触れると、瀬山くんは言う。
「礼華にも、喜嶋にも――迷惑をかけたな」
「そんな……私が、いけないの」
「いや……俺のせいだ。だから……」
「だけど、なにも……こんな時に」
「いいんだよ……ここにいる皆が、俺に切っ掛けを作ってくれたんだ。この時を、逃したくはない。だから……見ててくれよ」
そう言った瀬山くんは、縋るような赤緒さんを、その場に残す。
そして――その歩を進めると教室の中央に立ち、真っ直ぐに前を見つめた。
その視線が、捉えていたのは――。
「瀬山……どうした?」
「ちょっとだけ、お前に――話があるんだ」
「……!」
教壇に立つ西くんは、その表情を引き締めている。
瀬山くんの発する、覚悟のようなものが、自然とそうさせて――いた。
彼の仲間の、岸野くんや裕樹たちも――
堂林くんも――
僕と藍山さんも――
全員が息を呑むようにして彼を見つめ、次の言葉を待っている。
「……」
只、一人――彼を知る赤緒さんだけが、居た堪れないように、その顔を背けていた。
そんな――クラスメイトたちのいる――この教室で。
瀬山くんは、何時もの涼しげな微笑を浮べると――
「西……俺は、ずっと……」
ついに、その想いを――――口に、する。
「……お前のことが、好きだった」
【カイごう――了】