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クラス ×イト
第14章 カイごう 【乾英太4】

「……」


 藍山さんが――僕の小説を読んでいた。

 僕の彼女への想いを、その彼女自身が見守ってくれていた――。

 それを知った時――僕の中に湧きあがっていた、様々な感情。その中で一番、勝っていたものは、どんな気持ちだったか……。

 それは決して明確な何かではなかったけど、何処か昂揚したものが胸裏に去来していたのは、間違いがなかった。

 そして、藍山さんは言う。

「今――乾くんに、勇気をもらったよ。だから――」

「だから……?」

 訊き返した僕には、藍山さんは答えずにいて――けれども。

 その代わりとして、彼女が視線を向けたのは――北村先生の方だった。

 そして――


「先生――後で、お話ししたいことが、あります」


「藍山……?」


「私の話――聞いていただけますか?」


 北村先生は暫くの間、藍山さんをじっと見つめて、それから――


「わかった。心して、聞かせてもらうよ」


 覚悟を滲ませた表情を以って、そう応えていた。


 藍山さんが、その一歩を踏み出したこと。他の誰もがその意味をわからずとも、僕はそれを知ってる。


 そして、恐らくその姿を自分に重ねたのは、きっと――彼。


「何時までも……立ち止まっては、いられない……か」


 その声は、教室の後ろより静かに響いた。


「どうやら、次は――俺の番、らしい」


 長かったロングHRを――この日を――その最後を、締めくることとなるのは――


 僕でも、藍山さんでもなくて――彼。


 ――――瀬山宗助、となった。
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