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クラス ×イト
第15章 じゅバく 【赤緒礼華】
「――!?」
もう……着いたの? そう思いビクッと肩を揺らした、私。だけど、そこはまだ私が売られゆく、目的の場所とは違っていた。
白岩さんが車を道の脇に寄せて止めると、窓を開けて煙草に火を灯す。そして、口から静かに煙を吐き出しながら、私に言った。
「逃げても――いいんだよ」
「え……?」
「少し先に、交番がある。そこに逃げ込めば、とりあえず保護してくれるだろう」
その言葉は、あまりにも意外。私は訝しげに白岩さんを窺いながら、恐る恐る口を開いた。
「どうして……今、そんな風に言うんですか?」
単にからかわれてるだけ……?
でも、それにしては、その態度は何処か神妙。私の疑問に、白岩さんはこう答える。
「ここに至るまで、キミの意志は介在してない。だからね――最後は、自分で決めた方がいいと思ったのさ」
ホ、ホントに……逃げても?
白岩さんの話を疑わしく聞きながら、私はまた訊ねた。
「わ、私が逃げたら……父は、どうなりますか?」
「キミを売った、お父さんのこと――心配する必要が、あるのかい?」
「そ、それは……だけど……」
困窮する私を横目に、白岩さんは吸っていた煙草を、ピンと指先で窓の外に弾いた。
そして――
「どうしようが、キミの自由だよ。さあ――決めてくれるかな」
「……」
その選択を――私へと迫る。