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クラス ×イト
第15章 じゅバく 【赤緒礼華】
 そうして――初めて私が、売られる夜が来る。

 白岩さんの運転する車の――その後部座席。

「……」

 そこに所在無く、鎮座する――私が、いた。

 夜の街並みに車を走らせながら、白岩さんは言う。

「なぁに、大したことじゃないさ。誰もが経験することを、少し早めに済ませるだけ。まあ、違うのは――相手を選ばない代わりに、お金を頂戴するってことかな。優先することは、人それぞれだからねぇ。考えようによっては、決して悪い話でもないんだよ」

「わ……」

「キミに相手をしてもらうのは、主に金持ちのオジサンだ。あまり無茶はしないように、言い聞かせてある。まあ、最も――キミの歳を知った上で、それを所望する時点で真面な人格とは言い難いがね。それでも、大人しくしていれば、沢山のお金をくれる――つまりは、いいお客様って訳だ」

「私……」

 必死に何かを言おうとして、でもどう言えばいいか、まるでわからない。


「お父さんは――もう、キミを売っている」


「――!」


 それは既に、わかっていたこと。だけど、改めて言われて、私は……。

 まだ、冬でもないのに、身体が凍えるようで……とても、寒かった。

「……」

 震える身を縮めている私を、白岩さんがルームミラー越しに見る。すると――


 ――――キッ! と、突如として、車は停車していた。
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