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クラス ×イト
第15章 じゅバく 【赤緒礼華】
たぶん――きっと――私は彼のことを、困らせたかっただけ。私の中に、最初に生じた動機を吐露するのなら――恐らく、その程度のことだった。
育ちが良いか――については、あの父親をして、そうとは言い切れないとしても。少なくともかなりの資産家の息子であり、決してその部分に拘る筈もない私の目にも、その容姿は優れていると判断するに至る。
そんな何かと満ち足りた同い年の少年を、困らせてやりたい。つまりは、ちょっとした意地悪だ。但し大人の世界を覗いた私がそれをする場合、そんな可愛らしい言葉では十分ではないのだけれども。
ともかく、そんな心境も半分である私が、彼に対して難癖をつけようとして。でもその最中に於いて、私は自分でも気づいてもいない、その内側の傷を探り当ててしまった。
だから、その瞬間――。
「あ……!?」
私は思わず、手でその口を塞いだ。
自分の口をついた、その短い言葉に――自分自身が一番、驚きながら。
私は大きなショックに、苛まれているのだ。
恋なんて知らない。口にしたことすら、覚えもなく。無形であるが故に、その存在すら認める必要もないと思う、と。だから当然、そんなものに淡く憧れを抱くことなど――未だ。
なのに――その前に……私、は。
一歩一歩と歩む筈であった階段を、この身体が裂かれんばかりに引きずられて、登らされていた。その弊害は、劇薬を投じた後の副作用に、似ているのかもしれない。
「…………」
今更、気がついては――絶句。
そんな私は――滑稽であり、酷く惨めだった。