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クラス ×イト
第15章 じゅバく 【赤緒礼華】
…………………。
夜の雑踏の中に、あって――でも、そこには私と宗助の二人の場所。今、この瞬間だけは、何者にも干渉されること、なく。そう、思わせて――と、私は切に、願う。
私が失くしていたと思っていたものは、もうとっくに私の中に――あった。
それを自らの言葉で証明して、私は……?
その想いを受けて、宗助は……?
「……」
空間も、時すら意識することもなく――私は只、愛しい彼を見つめた。
だけど、知ってる……。
ドクン……ドクン……と、して。
その沈黙に高鳴り続ける鼓動は、何かを期待してのことでは――ない、のだ。
でも、それでも……届かないから、それを閉ざすのは、もう違っていて。届いて報われることだけが、意味の持つ訳ではないこと――を。
教えてくれた宗助に対する、はち切れんばかりの――これが私なりに辿った、結果(こたえ)。
此処に至るまでが、もう既に――私にとっては、結果だった。
なのに、そんな私にも――
「!」
瀬山宗助は言葉ではなく、でも――私にしかわからない、特別なものを――渡して、る。
ふっ、とした――その微笑み――は、初めてだった。
何時も浮かべる微笑とは異なる……と。それが解ったから、私は……心を震わせてる。
初めて私の前で、宗助の心が、笑っていた、から――。
それを見て、大事に受け止めようと、必死に感じようとして――
「ああっ……!」
私は思わず、そう声を漏らす。
その刹那――私の中の呪縛は、解けて、なくなって――く。
【じゅバく――了】