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クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》
こんなにも戸惑いながら、それでも傍目には平静な――私。せめて、取り乱して、取り繕うような真似でも、してみればいいのか?
そうしたなら、少なくとも。この空気の中に私の気持ちを漂わせることくらい、できるのかもしれない……だろう、けども。だけどそれでは、不誠実過ぎて。誠実であろうなんて、今まで私の念頭にはない筈だったけど。
今、乾くんの前では、そうありたくはなかった。
混迷する私は、とても不器用だから。そんな自分が、とても心許なくて、彼に申し訳なくも思っている。
それなのに、乾くんは――黙った私の代わりに、言葉を紡いでくれた。
「あ、あの……藍山さん。この後、先生の処へ?」
自分の書いた小説を読んで、私がどう感じたのか。それを知りたい筈――なのに、でも。その想いを隠すと、その表情はまた私への心配を示して、る。
「うん……話を聞いて、くるの」
私は、頷き子供みたいに、そう答えていた。その勇気と源ですら、乾くんからもらっていながら。だけど、不安に苛まれて、私はまだ甘えようとしてる。
「そう……でも、大丈夫?」
控えめに私を窺う、乾くんの顔を――じっと見つめて。
そう……か。
不安でたまらなくて、彼に甘えているのだ、と――私は気づくのだった。