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クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》
確か……。私――藍山楓が、高校生になって間もない頃だったと思う。
五つ年下の妹の栞と、何気なく交わした会話。何ら特別でなもない姉妹の他愛のないそれを、私は不思議と記憶に留めていた。
「お姉ちゃんって、さ。そんなに本ばかり読んでて――楽しいの?」
妹の栞は、多少素っ気ない性格ではあるけれど、別に悪気がある訳ではない。
「うん。凄く、楽しいよ。本を読むとね。色々なことを、知ることができるし。ハラハラしたり、感動したり、とても豊かな気持ちになれるの。栞も、読んでみたら、どう?」
「うーん……。栞はさ――細かい字を見てると、すぐ眠くなっちゃうから」
「ウフフフ――栞らしい」
真面目な顔でそんな風に答えた妹を見て、私は思わず笑っていた。
まだ小学生の栞にしてみれば、少しは自分に構って欲しかったのかもしれない。私は一人で本ばかり読んでいたから……。もう少し、一緒に遊んであげたかった――なんて、少なからず、後悔は残っていた。
後悔……? 否、結果的には――後悔する機会など、私には訪れてはいない。