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クラス ×イト
第16章 しんクロ 《藍山 楓》

 楓姉さんを失ってから、私から確かに欠落したものがあった。

 それは感情の拡がりであったのかもしれないし、もっと別の何かであるのかもしれない。

 欠いたものの正体がわからなければ、それが戻ったという証がある訳もなく。けれでも、確かに今の自分は、それまでの藍山栞とは違うのだと、そう思っている。

 でもその感覚は、とても些細で心許ないから。当然ながら、私が別人に生まれ変わるなど、そんな調子とはならない。

 結局、私は私として。それでもゆっくりと、これからは歩めるのだと思う。否、無理にでも、そう思いたいのだ。


「……」

 私は椅子に腰を下ろし机へと向かうと――パソコンを起動。

 常に何処かの『途中』にあった私。だけどその身体にも、あの兆しを感じることはあった。姉さんに比べれば細やかでも、似た何かは私にも育まれつつある。

 今の私はそれを――ちゃんと見つめてみようとしている。

 カチッ――と、マウスを鳴らして、サイトへのアクセス。すると――


「――!」


 読み続けた小説のページには、『完結』の二文字。それが目に止まると、胸がかあっと熱くなった。


『私は……貴方が書いた通りの、私に……なりたいと思う』


 私はそう、乾くんに伝えてる。

 自分で口にしながら、よく言えたものだと――それは、今更に。でも、恥ずかしさでこの頬を染めながらも、そう言ったことを後悔しようなんて微塵も考えたりは、しない。


「……」


 カチッ――。


 私はドキドキと胸を躍らせながら、栞を挟んだそのページを――開く。





【しんクロ――了】
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