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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ
彼はいつも教室の片隅で、決して目立つタイプではなかった。いつでも誰かに遠慮するようにしては、言いたいことも言えずに佇んでいたことだろう。
眼鏡の少年は、繊細で優しくもあった、けれど。時に控え目な笑顔を浮かべても、その心の中には大きなジレンマを抱えてたのだ。
そんな彼にも、仲間がいる。それを『D3』だなどと自虐的に構えてみてはいたけども。だがそこには、確かに大事なものが存在していた。
だからこそ互いのことで、頭を悩ませたり、お節介と思いつつ心配したり、何とか役に立ちたいと思ったり……。
その若さ故に気持ちを違えたりもする。傍から見ていたなら、詰まらないことでイジイジと悩んでいるようにも思えるのではないか。
だけど、それは須らく貴重な経験であろう。幾つかの場面を経ることは、彼を僅かながらでも成長させている――筈だ。
糸のような繋がりは細くも、時に思わぬ場所へと彼を導いている。それは期せずして、それまで自分と関わりがないとしていた人々へと繋がり。そんな彼らと気持ちを交えるたことにより、彼はまた何かを感じ――想い考えるのである。
そして何よりも、乾英太には――その心を焦がす想い人がいた。
その名は、藍山栞。英太の頭は今、彼女のことで一杯にしている。
何故――なら。