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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ
「……」
明日――日曜日。英太と栞は、会う約束をしている。奥手である英太がそう呼ばないにしても、それは二人の初めてのデートとして違いはあるまい。しかし、そこには一風変わった趣向が課せられていた。
英太の書く小説に於ける、主人公とヒロインのデートの場面。それがそのまま、英太と栞の明日の行動の全てを決めることとなっていたのである。
それを栞から委ねられたからこそ、英太は必死に頭を悩ませていた。
『私は……貴方が書いた通りの、私に……なりたい』
栞は確かに、そう言ってくれた。それでも――
「望むままに書いて……その通りにして……じゃあ、小説の二人が両想いなら……藍山さんも僕を、好きになるって……こと?」
普通に考えたのなら、それは無理なのだろうと、英太は思う。しかし、そうしてもいいと決めた栞のその心には、未だ考えが及ばずにいた。
願望にしても欲望にしても、それだって望みであろうが。否応なくそれらが混ざり込んだ時に、自分の恋心が汚れてしまうのではと、英太は恐れているのかもしれない。
自らの内から湧き出した、栞を好きだという気持ちを、崇高なものに留めておきたかった。
でも、綺麗なだけでは物足りないのだと、やがて英太だって気がつくのだから……。
大いに昂り、大いに悩みながら。今の彼はとにかく、小説を書き上げなければならないのだ。
その姿を見守り、せめて――二人の明日がよき日であれば、と。
明日――日曜日。英太と栞は、会う約束をしている。奥手である英太がそう呼ばないにしても、それは二人の初めてのデートとして違いはあるまい。しかし、そこには一風変わった趣向が課せられていた。
英太の書く小説に於ける、主人公とヒロインのデートの場面。それがそのまま、英太と栞の明日の行動の全てを決めることとなっていたのである。
それを栞から委ねられたからこそ、英太は必死に頭を悩ませていた。
『私は……貴方が書いた通りの、私に……なりたい』
栞は確かに、そう言ってくれた。それでも――
「望むままに書いて……その通りにして……じゃあ、小説の二人が両想いなら……藍山さんも僕を、好きになるって……こと?」
普通に考えたのなら、それは無理なのだろうと、英太は思う。しかし、そうしてもいいと決めた栞のその心には、未だ考えが及ばずにいた。
願望にしても欲望にしても、それだって望みであろうが。否応なくそれらが混ざり込んだ時に、自分の恋心が汚れてしまうのではと、英太は恐れているのかもしれない。
自らの内から湧き出した、栞を好きだという気持ちを、崇高なものに留めておきたかった。
でも、綺麗なだけでは物足りないのだと、やがて英太だって気がつくのだから……。
大いに昂り、大いに悩みながら。今の彼はとにかく、小説を書き上げなければならないのだ。
その姿を見守り、せめて――二人の明日がよき日であれば、と。