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クラス ×イト
第17章 エぴローぐ
気まずく黙り。何となく進んだ駅近くの公園の中で、佳奈はふと立ち止まり辺りを見渡す。郊外とは異なり街中のそれは整えられた景色が、少し物足りない。
ふとそう感じながら、佳奈はポツリと言った。
「私も、さ……これでも、割と考えてみたんだよね」
「どんな……こと?」
「礼華や瀬山のこととか、他にも色々……。私って今まで、何を見てきたのかな……とか」
「佳奈……」
「礼華のこと何も知らないクセに、その上辺に……ただ、憧れちゃってさ。だから、ね。そんな自分は、一体なんなのって……思った」
何時になく、しんみりと語る佳奈。その傍らで、裕樹どう声をかけようかと、迷った様子。
しかし、一転――佳奈は笑った。
「けど――そんな私を、ちゃんと見てくれた奴も、いるみたいだし」
「えっ……あ!」
裕樹は自分に向けられたその笑顔に、思わずドキリとする。
「なに、焦ってんの?」
「べ、別に……」
「それにしても――裕樹って、さあ」
「な、なに……?」
やや狼狽える裕樹を見て、佳奈は悪戯っぽく言った。
「やっぱ、服とかダサいよねー」
「は? なんだよ、急に――それ今、関係ないだろ」
予想外の指摘を受け、ムッとする裕樹だったが。
その和らいだ空気の中で、佳奈は少しだけ素直な自分であろうとしていた。
「そう、怒んないの。じゃあ、さ。今日は特別に、この私が服を選んであげよう」
「え……あ、ちょっと!」
「ほら――行くよ」
佳奈はそう言うと、裕樹の腕をひっぱり走り出す。
それは――変わるものを求めようとした訳ではない、から。
とりあえず、この辺から始めさせてよ……。
――と、佳奈はそう思っているの、だった。
一つの微かな心の触れ合いを感じ、また別のシーンへと――風は流れてゆく。